Tokyo Recluse

大人がちょっと冒険したくなる話。

tokyorecluse

世界一周をする。というただの現実逃避。

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僕が友人と2人で旅に出ることになったきっかけは、かなりよこしまな考えからであった。




大学3年生を終えようとしていた時期、周囲の「意識が高い系」たちは早くも本格的に就職活動に動いていた。そのころ僕とザリガニさんといえば、毎晩のように僕の部屋で決まってしょうもない話ばかりしていた。

 ザリガニさんとは、僕と0歳から同じ保育園にいた腐れ縁。ある意味精子時代からの盟友。性格は真逆だが考えていることの大筋はだいたい似ている。この日も同じだった。

 


僕:「なんか就活してますね、みなさん。」

ザ:「そうっすねー。僕らもそろそろやんなきゃですよねー。」




 

ザリガニさんと僕が話すときは親友にもかかわらずいつも会話が敬語になる。たぶん昔わりとガチでハマったマルチ商法の活動でスーツを着て2人で仕事をしていた間に、仕事っぽいやりとりが自然になってしまったのだ。
 


 

僕:「おたくは、なんかやりたいことあるんですか?」
ザ:「特にないんスよね、というかそもそも社会人になりたくないんスよね。」
僕:「わかるっすねぇそれ。ふつうに働きたくないスよね。まあいつかは働かなきゃいけないのはわかってるんで、どうせだったら社会人として働く前になんか一つくらいは面白いことやっておきたいんスよね。」
ザ:「そうそう、なんかやっておきたいんスよ。ナンカ。」


こんなクズ同士の会話が繰り広げられていた訳だが、この日僕らが考えていたのはつまり『いよいよ就職のことを考えなきゃいけない時期になったけど全然働く気がないどうしよう?』ということだった。
 
大人になるとだいたいみんな自分たちの学生時代を卑下する。「学生時代は全然勉強せずに遊んでたなぁ。」とか、「バイトばっかで学校なんで全く行ってなかったなぁ。」とか。正直そんなそんな次元ではない。この時点で僕は1浪人、ザリガニさんは1留年。もう4年生になるというのに卒業単位の半分も達してない。

おまけに学生ローンATMやクレジットカードのATMは「勝手にお金が出てくるマシーン」だと思っていたので、日々金銭トラブルに見舞われては借金を抱え、バイトして稼いでは結局パチスロと酒に使って消えるという非生産的なサイクルの繰り返しだった。

この時点でたとえ就職活動をしても、「学生時代は金と時間を浪費することに心血を注いできました!!」としか面接官に向かって自信を持って言えないレベル。僕らには就職活動で企業にアピールできるネタの1つもなかったし、そもそもやりたいことなんて何にもなかった。

 

この間も、ついにザリガニさんの二回目の留年に王手ががかかり、飲食アルバイト先の控え室で頭を抱えながら絶望していた。しかしその姿は、昨年彼の一回目の留年が決まる時のものと全く同じ姿だった。なんなら発言も場所もポーズも完璧に同じだった。もはや狙ってんじゃないかと思った。それを見て、本人の気持ちはさておき僕は抱腹絶倒した。あのときほどデジャブを見たと錯覚したことは今のところ他に例はない。


僕:「じゃあさ、ザリガニさんは留学とかどうなの?」
ザ:「う〜ん、留学ねぇ。でも3年になっていきなり留学ってなんか就活のネタづくりみたいでカッコ悪くない?しかもたかだか一年留学したくらいで英語できますヅラなんでできる気がしませんよ。」
僕:「確かにねぇ、留学はねぇっすわ。すみません。」


そこから沈黙して、何か『この就活しなきゃいけませんムードから上手く逃げられる方法』はないものかと二人して考えていた。

僕といえば、留学だってする気はさらさらないし、かといってたとえ役に立つものでも勉強と名がつく事は面倒なので絶対にやりたくなかった(←やっぱりカス)。多少お金はかかったとしても「楽しくて、そこそこ自分のタメになって、この就活ムードから逃げても人に後ろ指を指されなさそうなもの」でなければならなかった。

この時ある案が浮かんだ。

大学1年の時に高橋歩の『LOVE&FREE』を読んで以来ずっと、こいつは面白い。と思っていたこと。世界一周の旅である。

格安の国際航空便が増え、スマホやSNSが普及して簡単に情報が収集できるようになった今では世界一周のハードルはだいぶ下がったが、当時ではまだ珍しい。

だからこそ、これを実行すれば1年くらいは大学生のまま時間を稼げる。1年もあれば、自分がやりたい仕事・向いてる仕事の選別なんて十分にできる。就職活動に間に合う。よしよし、スキマスキマ。

もはやそれくらいしか思いつくものはなかった。

 

僕:「ん〜。では世界一周しかないっすね。」
ザ:「世界一周かぁ。なるほど〜、その手があったんですね。でもできるんすかねそれ?」
僕:「わかんないすけど、歩もやってるからたぶんできんじゃないすかね。」
ザ:「調べしましょう。」

 

iPhone3Gが日本に上陸して間もない時期だったので、スマホなんて持っていない。

ザリガニさんは、僕がオンラインゲーム『マビノギ』をするためだけに買ったグラフィックカードの性能以外クソみたいに使えないSharpのノートパソコンで、いくらかの情報収集をしてくれた。

ザリガニさんは意外にもあっさり乗ってきた。というかむしろノリノリだった。意外にちょろかった。

 やがてザリガニさんのキーボードカタカタ音が止み、次のようなことがわかった。

  • ちょいちょい世界一周してる人たちはいるっぽい。
  • 世界一周航空券というものがあり、先に旅行ルートとスケジュールを計画できる。
  • 滞在国を選んで貧乏旅行をすれば、一年間で100万円以下の予算でいける。


僕:「あれ、全然できちゃうじゃん。」
ザ:「全然できそうっすね。」
僕:「じゃあ行っちゃいますか。」
ザ:「そっすね。行きましょ行きましょ。」

 

こうして僕らは自分たちの逃げ道として世界一周という道を選んだのです。

 

つづく...

 

 *次の話はこちら。

pukapuka.hateblo.jp

 

 ※最終更新2018年3月1日